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SUCESS STORY
成功事例

CASE03

従業員を守り老後資金を手にした
90歳の創業者社長

業界の老舗企業が生き残りをかけてM&Aを決断した話をご紹介したいと思います。

後継者不在のまま、
社長の高齢化が進行

その会社は、ビルの清掃業をしており、創業50数年の歴史がありました。ピーク時の年商は約15億円。社長が一代で地場トップの実績を築き上げてきましたが、同時に後継者問題も長く社内に抱え続けていました。

役員たちが懸命に社長を説得

しかし、社長自身は当初、乗り気ではありませんでした。それまでも何回か、M&Aの仲介を持ちかけられたことがあったものの、そのたびに高すぎる着手金がネックとなって、決断できなかったようです。私がお話をうかがうために初めて会社を訪問したときも、「本当に紹介してくれるのか?」「決まるかどうかわからないし、期待もしてないよ」と、面と向かって言われたほど。私がM&Aのメリットやサポートの内容を説明しても、上の空という感じでした。

どうやら社長は、「自分が社長をできなくなったときは、会社をたためばいい」と考えていたようです。けれども、役員や社員たちはそれでは困ります。だから懸命に社長を説得したのです。
「社長、みんなの将来のことを考えたら、心配ですよね?」
「契約はあとからでいいし、きちんとやってくれるということですから、まずは話を聞いてもらいましょうよ」
と部下たちにかわるがわるすすめられた社長は、「まぁ、いいか」と、ようやくGOサインを出してくれました。

直接交渉に反対した理由

面談を重ねて会社の状況をヒアリングした私は、必要な資料を提供していただき、それを分析して「ノンネームシート」を作成しました。「ノンネームシート」とは、会社の名前を出さずに、企業情報や譲渡条件などをまとめた概要書のことです。通常は私たちアドバイザーがこのシートを持って、さまざまな企業へ打診していきます。

ところがこの会社は、取引先を通じて自分たちも買い手を探し始めました。すると、ある同業者から「興味がある。検討したい」という前向きな返事がきたとのこと。それはそれで喜ばしいことでしたが、「先方が、その後の交渉を自分たちで直接やりたいと言ってきた」というのを聞いて、私は反対しました。経験上、当事者同士だけの交渉はうまくいかない、という確信があったからです。

まずは、譲渡価格の問題です。第三者による客観的な評価が入りませんから、たいてい価格交渉が難航します。加えて、M&Aを進めていくための専門知識も必要になります。相手に膨大な種類の資料提出も求めなければなりませんし、ときには「早く出してほしい」と催促をしなければならないこともあります。

当事者だけでそうしたやりとりをすると、ギスギスした関係になりがちなのです。しかも、資料の内容を1つ1つ精査し、そのつど必要なことを質問する、といった一連の作業は非常に多くの時間と手間を要します。とても本業との片手間でできるものではありません。

以上のような説明をすると両者が納得してくださり、正式に私が両者の間に入って、橋渡しをお手伝いさせていただくことになりました。

買い手のメリット

買い手に名乗りをあげたのは、母体が建設業の会社でした。近年は公共投資が減少し、なかなか利益を出すのが難しい状況が続いていたようです。将来的な人口減少の不安もあり、多角化に乗り出しているとのこと。その一つが、ビルの清掃業だったのです。まだ小さなビルでの実績しかありませんでしたが、若い経営者が若い感覚でリーダーシップをとり、ユーザー目線にたったきめ細やかなサービスと、総合的なビルマネジメントの提案で業績を伸ばしていました。

そうした新しいノウハウを使って、より大きなマーケットにチャレンジしたいと考えていたところに、この話が舞い込んだのです。まさにタイミングといい、相手の実績といい、絶好の条件といってよかったでしょう。老舗のブランド力や九州各地の取引先を引き継ぐことで、大きなビジネスチャンスもつかめるからです。

希望価格の開きをいかに埋めるか

しかし、いざ交渉を始めると、壁にぶち当たりました。価格の希望額に大きな開きがあったのです。売り手は6000万円を希望していたのに対し、買い手の提示額は2000万円。それを聞いた90歳の社長は、「もういい!売らない!会社はつぶす!」と怒り出してしまいました。

その気持ちもよくわかりました。50年以上も手塩にかけて育ててきた会社が自分の考える3分の1の評価しかないというのですから、その怒りももっともでしょう。しかし、ここで交渉をやめてしまえば、元の木阿弥です。会社はやがて廃業に追い込まれ、従業員も路頭に迷いかねません。

長い沈黙の時間が続きましたが、私は粘り強く双方に歩み寄りを促していきました。何度も交渉を重ね、両方の会社で知恵を絞り合った結果、たどりついたのは、3500万円という合意点。M&Aは一気に成立へと進みました。

もし売却していなかったら?

買い手はこのM&Aによって、多くのものを手に入れました。老舗企業が持っていたたくさんの優良な取引先、蓄積していたノウハウ、ネームバリューなどを一挙につかんだことで、業績は飛躍的に拡大しました。

一方、売り手の社長は、希望額にこそ届かなかったものの、3500万円という創業者利益を手に入れることができました。老後の資金として心強い蓄えになったことでしょう。その後は会社経営からスパッと身を引き、悠々自適の生活を楽しんでいらっしゃいます。

もしあのとき、売却しなかったら、どうなっていたのでしょうか。

売上が減り続けていた要因は、実は後継者問題だけではありませんでした。新規参入の増加による競争は年々激しさを増していたので、生き残るためには、さらに徹底したコストの削減と作業スピードの向上が不可欠でした。そのうえ、顧客から求められる領域も、単なる清掃だけでなく、ビルのメンテナンス全体のマネジメントへと、拡大の一途をたどっていました。そうした時代の流れに対応していくだけの意識もアイデアも経済的な体力も、その会社には不足していたのです。

一時、起死回生を狙ってカラオケボックスの経営にも乗り出しましたが、数ヵ月で撤退。たとえ後継者問題がなくても、早晩、資金繰りに行き詰っていた可能性は高かかったでしょう。そうなると90歳の社長は、老後の蓄えどころか、多額の負債を抱え込むことになっていたかもしれません。

社員や取引先も大喜び

このM&Aには、取引先も大喜びしました。私も役員さんに同行して取引先に説明にいくと、「いやぁ、よかった!」と、心からほっとした様子でした。先方も社長の高齢化や業績の悪化については十分承知しており、「このまま廃業されたらどうしよう?」と、不安に思っていたのです。

しかもM&A後は、仕事の現場にも新たな活気が生まれました。ユニフォームや機材が新しくなっただけでなく、スタッフの若返りも実現。以前は年配だらけだったところに、若いスタッフの明るい声が響くようになり、取引先も喜んでいるようです。

しかし誰よりも喜んだのは、社員たちだったと思います。全員の雇用が守られただけでなく、成長企業の一員となることができました。仕事のやり方が見直されたことで、効率も改善し、早く帰れるようにもなりました。社員たちのモチベーションが大きく向上したこともあって、業績はV字回復。社員は改めて働く喜びと将来への希望を手に入れることができ、M&Aを決断した社長には全員が感謝していると思います。

会社の経営権は手放すことになりましたが、90歳の社長は、お金にはかえられない大切なものを守ることができた、といえるのではないでしょうか。

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